「移籍」
- 冨岡 耕児
- 4 日前
- 読了時間: 4分
こんにちは。トミーです。
今回は裏ボスから全員が「移籍」について書くよう指示がありましたので、僕も同じテーマで書かせていただきます。笑
僕も移籍を経験しましたし、以前、リーグワンチームに関わらせていただいた経験の中で、選手が入れ替わっていく様子を間近で見ながら感じたこともありましたので少し触れたいと思います。
近年のラグビー界ではプロ化が進む中で「移籍」はあたり前になってきました。
選手のキャリアはほんと短いです。プロとして活躍できる期間は平均して6〜7年くらいだと思います。もっと言うと2〜3年でキャリアを終える選手もいます。
その限られた時間の中で、よりよい環境、より高い報酬、より多くの出場機会を求めて移籍することは、選手の当然の権利であり、生き残っていくためには必要なことです。
全ての選手ひとりひとりに人生があり、家族があり、将来への不安もあります。だからこそ、選手自身が自分のキャリアをコントロールできる「移籍」は、理解されるべきだと思います。
ですが、リーグワンのチームをサポートさせてもらっていたとき、どうしても割り切れない現実もあると感じました。
そのチームは、どこにも行き先がなく、正直プロとしては限界ではないかと思われていた選手たちを、リスクを承知で受け入れていました。
その選手を3〜4年とかけて育成し、上位チームとの試合でも活躍できるまで成長させた矢先に、資金力のあるビッグクラブから声がかかり、年俸は数倍のオファー。
チームも常に優勝争いをしているようなクラブで
その選手たちは移籍することになりましたが、ルール上何の問題もありません。
でも、選手を天塩にかけて育成したチーム側としては、やりきれない感情が残るのも事実です。
そしてこれは、選手に限らずコーチでも同じことが起こります。
こんなことが繰り返されると、リーグ全体が「育成クラブ」と「トップクラブ」に二極化してしまい、資金の少ないクラブは才能を発掘しても、花開いた瞬間に手放さざるを得なくなる。
一方でトップクラブは、完成された即戦力を集めて強化を図る。そんな構図が見えてきます。
もちろん、どちらが悪いというわけではありませんが、こうした状況が続くと、「育てる意味」が揺らぐのと、勝つ=お金になってしまうのも個人的には考えさせられます。
「どうせうちで育っても出ていく」
「自分たちは踏み台なのか?」
「勝つ=資金力」
そんな声が現場から聞こえてくるようになると、クラブに根付く文化や帰属意識はどう育まれていくのでしょうか?この辺も気になっています。
人が変われば、チームも変わる。
リーダーが抜け、中心選手が次々といなくなれば、「チームとしての核」は育たない。
どんなに理念を掲げたとしても、それを日々の行動に落とし込む人がいなければ、文化は継承されないのではないでしょうか。
移籍によって活性化される側面がある一方で、「続けることでしか生まれないもの」もあります。それが「文化」のような気がします。
もちろん、ゼロヒャクではありません。
残ったメンバーが文化を守り、引き継ごうとすることで、クラブの存在意義が明確になっていくこともあると思います。
でも、そこに対する''意味づける場''がなければ、志し高いクラブほど疲弊してしまう気がします。
移籍の自由と文化の創造。
この両立は果たして可能なのでしょうか?
僕は、なんとなくですが、''繋がりの場''と''意味づけの場''がとても大きなキーファクターになると感じています。
リーグがさらに成長するためには、全てのステークホルダーに含まれるリーグ、チーム、選手、代理人が競技自体が何を目指しているのかを対話し続ける必要があると感じています。
リーグの過度なエンタメ化やビジョンのない競技力向上だけを追い求める中で選手、コーチが商品化され、使い捨てになるのは持続可能ではないような気がします。
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